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Caerula

徒然に、気の向くまま

レイトランチはベーグルを

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ベーグルを買うとき、必ず一回はお店の前を通り過ぎる。

もう一回、通りながら本当に買おうか悩みー

結局、買わないことの方が多い。

それは8年前に食べた私にとって最高においしいベーグルの存在があるからだ。

 

 

少ないメニュー、エッジの効いた「小さな食堂」 

突然だが、会社の売店に対するイメージとはどのようなものか。

私のそれはシャビ―なコンビニ。もっとも、売店のある会社に勤務したことがなかったので「完全なイメージ」である。

ところが、転職した今、当社のそれは入社時には想像しなかったほどにクオリティが高く、売店というより最早「小さな食堂」といっても過言ではない。売店の裏に調理場があり、そこで作られるメニューはどれもクオリティが高い。現地の味がするグリーンカレーには感動した。また、私はまだ食べたことがないのだが、同僚のレコメンドは焼き鳥丼とのことだ。

そして、売店の前を通り過ぎる日々を経て買ったベーグルサンドはちょっとびっくりなおいしさだった。

 

ニューヨークで食べるようなもちもちさはないけれども、ベーグルの外がしっかり焼いてあって中には惜しげもなく塗られたクリームチーズ。そこに厚切りのサーモンと塩分控えめのケッパーがこれでもかと挟まれている。カロリーのことを考えたら恐ろしいけれど…

美味しいベーグル、それもサーモンとクリームチーズと一緒にというのは私にとってスペシャルだ。

 

「ニューヨークの朝はベーグルを買いに行かなくちゃ」 

ベーグルとの出会いは2008年のニューヨーク

「ニューヨークに旅行するならうちで“暮らし”てみるのはどう」

そう提案してくれたのはハドソン川をはさんだニューヨークの対岸、ニュージャージーの友人夫妻だった。

マンハッタンまでの「通勤」時間はバスで30分。たった2週間の住まうように旅する生活はとても楽しかった。

 

「ニューヨークの朝はベーグルを買いに行かなきゃ」

地元の人でなければ行くことのないであろう小さなお店は朝7時前だというのに人であふれかえっていた。

「オーダー悩んでいると、店員さんが不機嫌になるからね」

そんな注意を事前に受けるも、そもそもベーグルを食べたことがなかったし、何を選んでいいかも分からず。迫力ある“おばちゃん”の顔に“one of each”というのが精一杯。結局、子供の顔ほどもありそうなベーグルを、全種類持ち帰った。 

 

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当時の写真発見。恐るべし、Google

 

プレーンを一口頬張ってびっくり。

焼き目の程よい香ばしさに反し、中はしっかりと弾力のあるパン。

モチモチという言葉が一般に用いられるが、それもいささか違う気がする。

口のなかで長らく噛んでいても、ダマになることもない。

何と言っても硬くはないのにカリッとした表面からかみごたえのある内部に至るまでの食感が新しかった。きっと抜群に歯切れがいいのだ。

 

何もつけずにひとつ完食した私に差し出されたのがKiriのクリームチーズとコーシャーサーモン、青ネギだった。

 

コーシャ―とはユダヤ教の食べ物に関する規定のことだが、アメリカではコーシャ―ミールの人気がある。確かに、美味しい。何が違うのかわからないけれども、何でもない量販品のピクルスを買っても、美味しい。旅のスタートに、スーパーでコーシャ―ミールを買うようになったのはこの時の経験が大きい。

 

脱線したが、そんな贅沢なサーモンをたっぷり載せて食べるのだという。

Kiriのチーズを薄く塗ったら「足りない」と言われ、「たっぷり」を通り越し「べっとり」とのせ、サーモンと青ネギを散らせた。材料のすべてがこれ以上なくシンプル。

その美味しさはあえて書く必要がないだろう。

 

 

あの時の味を私の脳はあまりに美化している気がする。

きっと実際の味よりも遥かに美味しいものとして脳内にインプットされている。

当事、既にベーグルは日本でも流行しており、食べることが大好きな友人に至っては毎朝のように食べているとも聞いていた。彼女はめったに人に何かを薦めない人で、そんな彼女のレコメンドは私が行かないようなお店や食べものばかり。そしてどれも美味しかった。にもかかわらず、ベーグルは食べたことがなかった。

どうしてこんなに美味しいものを今まで見向きもしなかったのだろうと後悔した。

 

もっとも、帰国してあちこちのベーグルを食べたが、未だにーそれはニューヨークにおいてさえーあのベーグルを超えるベーグルには出会えずにいる。

狭いお店に充満する焼きたてパンの香り、無愛想でなんだか迫力ある売り子のおばちゃん、それをすぐに食べたのだから、早々簡単に見つけられるはずがないのだけれども。

 

だから、ベーグルを買うとき、私はすごくドキドキする。

買って失敗したなと思うことのほうが実は多い。

それでも、買わずにはいられない。

あの時の美味しさを求めて、これからもきっとベーグルを買い続ける。

だから、今日みたいにご飯が遅くなった時のランチはサーモンとクリームチーズのベーグル。