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Caerula

徒然に、気の向くまま

会社にこそピンヒールを履いて行こう - お題「愛用しているもの」

回顧録 ファッション 徒然 女性が働くということ お題

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人生最初のピンヒールにさようならをすることにしました。

修理して履き続けましたが継ぎ目の糸が切れはじめ。
「ここまで大切に履いたのだから、もうさようならしてあげてもいいですよ」
とシューリペアの職人さんが私に代わり引導を渡してくれました。

 

 

ピンヒールとの出会い 

女性が働くことの「壁」

5年前、私は鬱々としていました。

念願叶い異動した先は男性ばかり、私が最初の、そして唯一の女性総合職でした。部長が女性にこの仕事はさせないと言っているのは知っていたけれども、下積みをした先にある仕事がしたくて必死でした。終電は当たり前、月の半分以上はタクシー、始発で帰宅し、身支度整え3時間後にはオフィスにいたこともありました。

でも、その後異動してくる男性総合職は業務未経験であろうと無条件で顧客担当が付くのに、私はいつまでたっても部署全員の提案資料作成と補佐業務ばかり。

みかねた周囲が、私がクライアントを持たなくとも、責任を負った提案書はプレゼンできるように部長に進言してくれましたが、のらりくらりとかわされ。結局、私が外へ出ることはありませんでした。

そんなとき、部内別チームの数少ない尊敬しているボスが言ったんです。
「まだ、連れ出してもらえないのか。
 だったら、ピンヒール、履いてこい。俺が連れてってやる。

 

仕事にピンヒール? ありえない。

当時持っていた最も高い靴は6㎝、接地面は1.5×3㎝程度。どんな仕事でも下っ端は機動力が重要。大量の資料を持って走り、上司と同じスピードで歩き、時には先回りして何かをする。だから、細いピンヒールを履いて仕事なんてできないんです、本当は。
それに、私は女性というだけで目立ちました。身長も高い。声の通りが良く(あだ名は「アナ(ウンサー)」)何をせずとも目立つ。これ以上目立ちたくありませんでした。

 

「ハラスメントです!」…とは言えなかった

普通ならね、言います。
もっとも、互いの性格を理解しているからこその言葉。
普段なら冗談めかして返事をする私ですが、少しムカッとしました。

「なんでそんなこと言われなきゃいけないの」って。

ピンヒール履いてこい…え、命令形? 何様?
そんなの、貴方の女性の趣味でしょ? ふざけるなって。

それでも。

この機会を逃したら、コア業務をすることなく、異動するかもしれない。
靴一足で客先に行けるならと、人生初のピンヒールを2足購入しました。

翌週、私は初めて客先でプレゼンをし、その既成事実を利用し他の人たちも私を客先に出してくれるようになりました。 

 

あれから5年、私の仕事靴は9割以上が8㎝を超えるピンヒールにかわりました。
初めて履いた日、あんなにも心もとなかった細いヒール、僅か数センチで激変した視界に恐怖をおぼえたのに...今ではその靴で社内、街中、走り回っています。

 

ピンヒールを履いて変わったこと

ピンヒールを履いて、仕事のみならず人生が劇的に変わりました。
それは「心の在り方」が変化したから。
ピンヒールを履いてるとね、背筋をきちんと伸ばして堂々と歩かないと本当に格好悪いんです。足元見ながら歩くなんて論外。信号待ちしているときだって、電車に乗っているときだって。いつなんどきも、気を抜けません。
普通の靴以上に、なんだろう...緊張感が全然違う。
それがいい意味で自分に作用しました。

 

1. 女性であるということをナチュラルに受け入れられるようになった

入社直後は「経験が浅い」と言われます。それがあるタイミングから「女性のくせに」にかわります。その後、異動し「女だから」と言われるたび、男性を上回る成果をあげチャンスを掴まねばと必要以上に自分を追い込んでいました。
でも、結局自分の仕事は周囲が見てくれていました。部長とはこれ以上ない最悪の関係でしたが、周囲や他部署、クライアントはひとりの仕事人としての私を見てくれていたんです。ヒールを履いて外に出ることができたおかげで、そういったことが見えてきて、変な力を入れないで仕事に集中することができました。

2. 自己評価が適正基準に近くなった

最初の上司から「上昇志向が強い故に自己評価が低すぎる」と言われました。
仕事は携わるほどに「できること」より「できないこと」「うまくいかないこと」に直面し、高い評価なんてできないんです。
でも、ヒールを履きだしてから、自分の過小評価はやめて、パフォーマンス=実績はしっかり評価するよう、周囲にねじ込むようになりました。
背筋伸ばして生きた結果、今の自分をきちんとアピールしようと思ったのだと、個人的には思っています。

3. うまくいかなかったダイエットに成功した

私は万年ダイエッターでした。
前述のとおり、ピンヒールは自分を緊張状態に置くのにこれ以上ないアイテムで。
ダイエットに臨む姿勢が大きく変わったのだと思います。
時を同じく南米を旅行し、自分のビキニ姿に危機感を持ったとの説も有力ですが(笑)
それまで減ってもすぐに増えていた体重は半年で約10kg減り、今もその体型は維持しています。

 

様々なことが良い方向に変わり、結果として転職まで突き進んでしまいましたが、件のボスの暴言「ピンヒール履いて来い」は
「やるべきことやってるんだから、堂々としてろ。まっすぐ前向いて走れ」
という意味だったんだと、今の私は思っています。
ボスに言ったら「俺の好みだよ」と一蹴されます、間違いなく(笑)

 

男性しかいなかったところで働くのは想像以上にエネルギーが必要です。
心が折れることもよくあります。男性が想像できないだけで、その多くは実はとるに足らないことですが、そのことに気が付くまで無駄に傷つきもします。

だからこそ、そんな世界で生きていくことを決めた人にこそー
会社で、ピンヒールを、自分のために、己を見失わないために、
履いてほしいと思うのです。

 

お題「愛用しているもの」